「新人にも分かる 工場安全のツボ」は,生産現場における本質安全構築の基礎を学べるQ&A方式のコラムです。現場で悩むことの多い工場安全の疑問とその回答を通じて,真の工場安全を実現するために必要な考え方や手法を紹介していきます。

【Q1】新しく配属される現場では,木工機械を使っています。木工機械は危険性が高いので気を付けるようにと前任者に言われました。具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか?

 木工機械を扱う産業(木材・木製品製造業や家具・装備品製造業など)の事業所は,労働災害の発生頻度が高い傾向にあります。厚生労働省の統計によれば,前出の産業における労働災害の度数率(労働時間当たりの災害発生件数)は,製造業全体に比べてかなり高いのが実情です。

 より安全な労働環境の実現には,リスクアセスメントを行い,リスクの大きさに応じたリスク低減方策を実施する必要があります。その際,リスクアセスメントにおいて重要なプロセスの一つである「危険源の特定」を効果的に行うには,木工機械特有のリスクや危険事象を事前に把握しておかねばなりません。そうすることで,危険源を洗い出す際に漏れを最小限に抑えられます。

 さらに,機械特有のリスクを知っていれば,適切な安全方策を実施したり,適切な作業を指示したりすることが可能になります。そこで,今回は木工機械類特有のリスクおよびその対策例を紹介していきます。

〔以下,日経ものづくり2009年10月号に掲載〕

西原一寛(にしはら・いっかん)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
IDEC技術本部規格安全ソリューションセンター室長。各種検出制御機器・機械安全制御機器・防爆安全制御機器の製品開発および事業企画に従事。現在,安全関連の講演のほか,機械装置メーカー/ユーザーに対し,リスクアセスメント支援を行う。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。
前田育男(まえだ・いくお)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
機械,制御,安全,防爆などに関する国際規格,欧州・北米各国規格/規制に基づく製品認証関連業務やリスクアセスメント支援に従事。現在,制御・安全技術に関するIEC(国際電気標準会議)の委員をはじめ,ロボット技術,防爆技術,機能安全技術,半導体製造装置関連の標準化活動に携わる。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。
関野芳雄(せきの・よしお)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
安全制御設計技術者として多くの製品開発に携わり,現在は,グローバルに通用する本質安全設計/安全防護の考え方などの安全技術指導や安全システム設計に従事。ISOロボット安全規格作成の国際委員としての経験を基に,機械メーカー/ユーザーに対する各種リスクアセスメント支援を行う。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。
岡田和也(おかだ・かずや)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
安全機器,システム,ネットワークなど,安全制御設計技術者としての経験を有し,現在は,ロボット制御セル生産システムのリスクアセスメントや安全システム設計に従事。ISOロボット安全規格の国際委員会委員,安全応用研究会専門委員会委員などの規格関連委員を務める。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。