3次元モデルを基本とした設計プロセスの実現には,設計者が使う3次元CADの操作性向上が不可欠だ。設計者が意図した形状を実現するのに煩雑な操作が必要で,手間と時間がかかるようでは,設計者に大きな負荷がかかってしまう。

 操作性向上の方法として近年,注目されているのがモデリングの履歴(ヒストリー)の影響を排除することだ。モデルの作成順序や拘束関係を気にすることなく,設計者が意図した部分だけを柔軟に変形できることを目指している。

 ただ,ヒストリーは基準面や穴と穴の関係といった設計意図を3次元モデルに組み込むことに役立つ。また,ヒストリーをしっかりと理解している人にとっては,ある一部分を変形するだけで関連する多くの部分を自動的に変形できるといったメリットもある。単にヒストリーをなくすだけでは,ユーザーニーズを十分に満足させられない。

 ヒストリーに対して,各CADベンダーがどのように対処しようとしているのか。以下,主要なミッドレンジCADである3製品「Solid Edge」「Autodesk Inventor」「SolidWorks」に組み込まれる予定の新機能を例に,モデリング手法の最新動向を解説する。

二つのモデリングモードを用意

 米Siemens PLM Software社は2008 年,ヒストリーに依存しないモデリングを可能にする技術として「Synchronous Technology(ST)」を開発。同年に「Solid Edge with Synchronous Technology」として実際の製品に組み込んだ。

 これにより,Solid Edgeは従来のヒストリーベースのモデリングとSTによるノンヒストリーベースのモデリングが可能となった。Siemens PLM Software社では,前者をTraditionalモード,後者をSTモードと呼んでいる。ユーザーは両モードのいずれかを選んでモデリングを行うことになる。

〔以下,日経ものづくり2009年10月号に掲載〕