岩垂 好彦
野村総合研究所 グローバル戦略コンサルティング二部
上級コンサルタント

 2009年の人口は約12億人。それが2030年には約14億人と,中国を抜いて世界最大人口国家になるとみられているインド。グローバル企業にとって,インドは中国と並んで,今後最も重視すべき市場と言っていい。世帯年収で上位数%といわれる「富裕層」を対象にしただけでも,数千万人規模の市場があるためだ。

 インドは近年,急速な経済成長を遂げてきた。2003~2007年には,GDP成長率で8~9%の成長を維持した。さすがのインド経済も,「リーマン・ショック」に端を発した世界金融危機の影響は免れなかった。2008年のGDP成長率は6%程度に下がり,2009年の成長率も春時点の予測では4%にまで下落するとの数字も出ている。

 ただし,金融危機の影響は,先進国やロシア,ブラジルなど他のBRICs諸国と比較すると軽微であり,既に回復基調に転じているとの見方も多い。

経済は一時減速するも順調に成長

仮説と実態に乖離

 もっとも,インド市場の攻略は一筋縄では行かない。インドは国土が広大で地域によって所得格差がある上,多様な文化的背景を持つ。30弱ある州にはそれぞれ独自の言語や習慣があるなど,多様性に富んでいる。富裕層の消費性向も,画一的ではない。

 そこで我々は,インドの富裕層市場の実態を明らかにするために,以下の調査を行った。具体的には,世帯年収が50万ルピー(1ルピー=1.9円換算で95万円)以上の富裕層を対象にした,アンケート調査とグループ・インタビュー形式の調査である。前者は,インドを代表する大都市であるデリーとムンバイ,さらに住民の平均的な学歴が高く近年注目を集める地方都市チャンディーガルにおいて,後者は上記の都市に加えて,バンガロール,ジャイプールで実施した。

『日経エレクトロニクス』2009年9 月7日号より一部掲載

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