FPGA大手のXilinx社。世界的不況の影響を受けてもなお,直近の四半期決算では約15%の売上高営業利益率を誇る。約25年の歴史を持つ同社だが,実はこれまでにCEOを務めた人物は3人しかいない。初代,2代目のCEOの在任期間が共に10年を超えるなど,長期政権が続いたからだ。同社の現在のCEOが,2008年1月に就任したGavrielov氏である。Xilinx社をどう導くか,その戦略を聞いた。(聞き手は,本誌副編集長 大石 基之)

写真:吉田 明弘

 

─米半導体工業会(Semiconductor Industry Association:SIA)の会長などを務め,カリスマ社長といわれた前CEOのWillem P. Roelandts氏からバトンを引き継いで約1年半。この間,Xilinx社をどのように変えてきたのでしょうか。

 エレクトロニクス業界を直撃した逆風の中,非常に慌ただしい1年半でした。何よりも重要視して取り組んできたのは,財務面でのコスト削減とともに,できるだけ早期に新しい技術・製品を市場に投入することです。成果として,2009年2月に40nm世代の高性能・高機能FPGA「Virtex-6」と,45nm世代の低価格FPGA「Spartan-6」を同時に発表できました。研究開発(R&D)部門の人々に苦労してもらったおかげです。今度はマーケティングや営業の部門が,Virtex-6やSpartan-6をいかに市場に投入していくかが重要になります。これがうまくいけば,次は R&Dの部門に,「次世代の製品開発をもっと進めていきましょう」と言える。これだけ営業の人々が売ってくれたから,「さらに新しいものを世に出しましょう」と働き掛けていけるのです。こうして今後も製品開発でリードしていきます。

─共に基幹製品であるVirtexとSpartanの新世代品を同時に発表することにこだわった理由は何でしょうか。

 顧客に選択の幅を提供できる点で,大きなメリットがあるからです。新製品を目にしたとき,顧客は,「これを使ったら何ができるか」など,いろいろなことを考えるでしょう。とするなら,FPGAで実現できる機能や性能などについて,我々が幅広い選択肢を提供できた方がよい。VirtexとSpartanの新世代品を同時に発表すれば,それを実現できます。この目標のために,Virtex-6よりもSpartan-6の方をさらに前倒しで開発したのは確かですが,実際には両方とも開発を前倒ししました(笑)。


『日経エレクトロニクス』2009年9月7日号より一部抜粋

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