LSI設計やEDA分野で世界最大の国際学会・展示会である「46th Design Automation Conference(DAC 2009)」が2009年7月26~31日の間,米国サンフランシスコにおいて開催された。展示会場では米Synopsys, Inc.や米Cadence Design Systems, Inc.といったEDAベンダーによる出展が大半を占めたが,学会発表や関連イベントの場では組み込みソフトウエア分野に関する発表も多く見られた。 LSI設計においても,その上で動作させるソフトウエアの挙動を踏まえなければチップのアーキテクチャを決められなくなってきていることが背景にある。

SysMLをシステム要件の記述に利用

 具体的には,組み込みソフトウエアを含めたより上位の抽象度で設計を行う「ESL(electronic system level)設計」,システム全体のアーキテクチャや性能見積もりを迅速に行う「仮想プロトタイピング」など,ハードウエアとソフトウエアの境界領域に関する発表が以前にも増して注目を集めつつある。このほか複数のLSIがネットワークを介して接続される車載システムの設計技術についても進展があった。単体のハードウエアだけでなく,より上流の段階に向けた設計技術の開発が活発になっている。

SysMLの活用事例を披露

 LSIだけでなく,機構系なども含めた機器全体の要件や設計仕様を表現するためのモデリング言語としては,UML2.0を拡張しOMGで標準規格となった図式言語「SysML」に期待する声が多い。DAC 2009では,このSysMLの活用事例を米Lockheed Martin Corp.が発表した。具体的には,DAC 2009の関連イベントとして開催されたSystemCのユーザー会において,イージス艦の戦闘システムなどの開発元として著名な同社の MS2(Maritime Systems & Sensors)部門が講演した。軍艦向けの高速ルータの開発にSysMLおよびSystemCを適用したという。SysMLという共通言語を用いることで,ハードウエアやソフトウエアなど複数の部門間のやり取りを効率化した。

『日経エレクトロニクス』2009年9月7日号より一部掲載

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