趙 新宇,葉 平
シンガポールGfK Asia Pte Ltd, Beijing Office

 中国政府は今,景気刺激と生活水準の向上を実現するため,家電の普及を精力的に進めている。政策には二つある。2007年12月から試行されていた農村部向けの「家電下郷」と,2009年中に開始される都市部向けの「家電進城」である。「郷」は農村を,「城」は都市を意味する。

 これらの政策の対象商品は家電進城の方が多いものの,似通っている。具体的にはテレビ,冷蔵庫,携帯電話機,洗濯機,エアコン,パソコン,電気温水器などである注1)。家電下郷で購入者に給付される補助金は,購入価格の13%。家電進城においては10%に及ぶ。本稿では,潜在的な市場規模が巨大な農村部を中心に,家電の販売状況を紹介していく。

中国全体では需要が伸びた

半期で300億円以上を農村に

 中国政府は河南省や四川省といった一部地域で家電下郷を試行し始め,2009年2月から景気浮揚を主眼として対象を中国全体に広げた。対象期間は,2011年末までの約4年間である。

 給付金額は,かなり多い。2009年2月に中国政府は,補助金の予算を約20億元(1元=14円換算で280億円)とした。ただし,中国商務部の資料によれば,2009年上半期に対象となった家電の販売金額は,162億元(2268億円)に達した1)。中国各紙が報じた商務部副部長の談話では,対象となる額がさらに多い。280億元(3920億円)である。つまり計算上,上半期発生分だけで中国政府は前者の金額の場合300億円ほど,後者の場合500億円ほどを国民に給付していくことになる。

 我々の調査でも,家電下郷の効果は見て取れる。大都市では不況の影響を免れず,2009年第1四半期の家電販売は,多くの商品カテゴリにおいて前年比でマイナスの成長率となった。ところが,中国全体ではカラーテレビが前年同期比11%増,冷蔵庫が同4%増というように,成長した商品カテゴリが多かった。家電下郷が需要を押し上げ続けるかどうかは注視しなければならないが,ごく短期間で効力を失うことはないだろう。

巨大な潜在市場

 中国の農村部では,多くの日本人が思う以上に,家電が普及していない。農村部は約9億の人口を抱えているが,ここでの冷蔵庫と洗濯機の世帯普及率は50%にすら達していない。カラーテレビの普及率はさすがに100%近いが,大半の家庭はCRTテレビだけを保有している。

『日経エレクトロニクス』2009年8 月24日号より一部掲載

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