雑誌 特集

忍び寄る1GHz超ノイズ

甘く見るべからず

宇野 麻由子=日経エレクトロニクス
2009/08/20 16:00
 

第1部<インパクト>
1GHzを境に変わるEMI対策
国際規格の改定がキッカケに

電子機器が発する高周波の放射電磁雑音,いわゆる1GHz超ノイズへの注目が高まっている。EMI規格が改定され,規制範囲がGHz帯にまで広がるためである。デジタル家電全体が規制対象となる見通しで,機器メーカーには対応が求められる。

GHz帯電磁雑音規制,デジタル家電に広がる
(イラスト:山井 淳一)

 1GHz以上の電磁雑音についても,放射を抑えなければならない─。携帯電話や無線LAN,GPSなど,GHz帯を利用する通信などへの妨害を避けるという旗印の下,電子機器に対するEMI規格が改定され,厳格化の波がやって来る。まず2010年10月に,プリンターなどに対して最大6GHzまでの放射電磁雑音の規制の運用が欧州と日本で開始される。基になっているのは,2005年に発行された国際規格「CISPR(シスプル)22」だ。プリンターや複合機,パソコンなどの「情報技術装置」について,規制対象となる放射電磁雑音の周波数帯域の上限を従来の1GHzから6GHzへと一気に高め,規制範囲を広げている。このCISPR22が欧州と日本を皮切りに世界各地でいよいよ規制化されるため,機器メーカーは対応を迫られることになる。

 しかも,1GHz超の放射電磁雑音に対する規制厳格化の波は,次第にエレクトロニクス業界全体を巻き込む大波になっていく。情報技術装置を対象とするCISPR22に,テレビなどの放送受信機やDVDレコーダーといった関連機器を対象とする「CISPR13」が加わり,新しい規格「CISPR32」として拡張するためである。対象機器には,ゲーム機や携帯型オーディオ・プレーヤー,電子辞書なども含まれ,いわゆるデジタル家電全般に及ぶ。

 電子機器に対する放射電磁雑音の周波数帯域の上限が, 1GHzから6GHzに高まるインパクトは大きい。現在,1GHzを超えるクロック周波数を使うLSIなどの雑音源は多くの機器に搭載されているが,現行のCISPRでは1GHz以上の放射電磁雑音に対する規定がない。そのため,「発生する雑音は今まで1GHz以上に逃がしていた」(EMC技術者)という機器も少なくないからだ。

現行製品ではそれほど出ていない

 注目を集める1GHz以上の放射電磁雑音。実際,電子機器を調べると「10数年前から出ている」(NECトーキン 研究開発本部副本部長の吉田栄吉氏)という。たとえ使用するLSIなどのクロック周波数が200MHz以下と低くても,高調波による放射電磁雑音が生じる。

 では,今回改定され,プリンターなどが対象となるCISPR22の規格を満たすのは難しいのだろうか。実は,1GHz以上の放射電磁雑音は,米国の FCC(連邦通信委員会)などによって既に規制されている。FCCの規制と比べると,CISPR22は1G~3GHzの帯域で4dB厳しくなる。

『日経エレクトロニクス』2009年8月24日号より一部掲載

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第2部<対策>
測定評価・設計・実装が3本柱
部品頼みはもう通用しない

そんなに出ないが,出ていると止めにくい─。1GHz超ノイズの特徴は,この一文で表現される。対策するには,測定評価,設計,実装の工程すべてで準備を進める必要がある。

1GHzのギャップを乗り越えろ

 「1GHz以上の電磁雑音対策にマジックはない」─。米Missouri University of Science and Technology(MST), Assistant Professor, EMC LaboratoryのJun Fan氏は,こう言い切る。実際,対策で先行するメーカーが力を入れるのは,基本に基づいて抜けなく確実に電磁雑音対策を行うということだ。そのために,測定評価,設計,実装の工程すべてでGHz帯の電磁雑音低減に向けた取り組みが不可欠になる。

 まず,測定評価では1GHz以上の電磁雑音に対する規制に合わせた「測定環境・体制の整備」が必須となる。第1部で述べたように,暗室などの設備の整備にコストが掛かることと,測定評価そのものの時間が増加することが主な課題である。測定評価におけるコストと時間は関連性が高いため,両者のバランスを勘案しながら体制を整える必要がある。

 設計や実装の工程では,対策用チップ部品などを利用することで雑音を低減する,いわば「部品頼み」の手法が通用しなくなる。プリント基板上に電磁雑音の放射源が複数発生するので,対策部品の実装では対応するのが難しい。さらに,従来のように対策部品を配置しても雑音を低減するのはたやすくない。もちろん,これから1GHz以上で高い特性を備えた対策部品が次々と登場する。だが,そうした高周波対応の対策部品を,既存品と同様の基板と筐体に同じように搭載しても機能しない可能性がある。

 解決するには,基板レベルでの対応が必須だ。そのためには,設計と実装の両面から取り組むしかない。実装で「高周波対応対策部品の使いこなし」が重要になるのはもちろんのこと,それを実現するために設計など,工程初期の段階で製品品質について十分な検討を重ねるフロントローディングが欠かせない。フロントローディングを工程に組み込むための「体制づくり」と「ツールの活用」がキモになる。

外部のサイト,ついたてを活用

 まず,測定評価の対応について具体的に見ていこう。設備のためのコストと測定のための時間を根本的に減らすのは難しいが,付随する点についてはいくつかの提案が出てきている。

 電波暗室のうち,評価用暗室は初期投資に加えて,認証取得のための維持管理コストもかさむ。自社内にある評価用暗室の稼働率が低いようであれば,自社保有ではなく,外部の設備を利用するというのも手だ。

 電波暗室の貸し出しやEMC測定・評価サービスを提供する国内の測定サイト(試験所)は,ここ最近,新設ラッシュになっている。屋外試験所(オープン・サイト)の多くが,2011年に移行する地上デジタル・テレビ放送波の影響を受けて測定環境が不安定になるためだ。つまり,測定サイトを屋外から屋内に移そうというわけである。併せて,1GHz以上の電磁雑音を測定できるように改修する場合が多い。

『日経エレクトロニクス』2009年8月24日号より一部掲載

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