日本ファスナー工業は,炭素鋼やボロン鋼,合金鋼といった冷間圧造用の線材と,その加工品である産業用六角ボルトや建築用高力ボルトなどを一貫生産する。この分野では,線材製造と冷間圧造の各工程をそれぞれ専業メーカーが担うのが一般的だが,工程が分断されるとコストアップや納期遅れの原因になりやすい。加えて,不良の原因が線材にある場合,加工専業だと原因の究明が難しい。これに対して同社は,両事業を手掛けることでコストや納期面で優位が保てる上,上流工程にまでさかのぼって改善策を採れるのが強みだ。

 しかし,生産品である線材やボルトのほとんどはJIS規格品なので他社と違いを出しにくい。そこで近年は,工程改善や製品への工夫を凝らすことで付加価値の向上を進めている。

環境負荷低減を顧客が評価

 環境対策も拡販作戦の一環になっている。高炉メーカーから購入した棒材を所定の径の線材に仕上げる精線工程は,素材表面の酸化皮膜(スケール)を酸洗することから始まる。通常は,この際に大量の廃液が出る。そこで,1991年に開設した日野工場(滋賀県・日野町)の主力ラインでは,5年間をかけて酸洗をサンドブラストに変更し,この工程で発生する廃液を大幅に減らした。

〔以下,日経ものづくり2009年8月号に掲載〕

潤滑油に水溶性油を使ってテスト中のねじ転造機
タービン油を水溶性油で代替する計画。水溶性油を使うと脱脂洗浄の回数を減らせるので,排水量を減らせる。