メーカーというのは,一種のエンターテイナーじゃなきゃダメだと僕は思っているんです。考えてみれば,エンターテインメントって不思議なもので,映画や演劇,コンサートに行くお客さんは,残らないものにお金を払う。特に役に立つわけでもなく,見たら終わりなのに,平気でチケットが即日完売になるじゃないですか。
プラモデルって,ものづくり企業の製品の中でも,全く役に立たないものですよね。それどころか,子どものときは「そんなもの作ってないで勉強しなさい」と叱られ,大人になっても嫁さんに「そんなもの買ってきてどうするの」と怒られ,いつまでも褒められることのない存在です。でも,人って,お酒を飲んだりスポーツをやったり,そういう楽しみや癒やしがないと生きていけないでしょ。
模型って要するに癒やしの産業で,お客さんに立体物を通して飛行機や戦車の情報を伝え,感動を引き出す。だからエンターテイナーでなければならないんです。お客さんはその情報に対価を払っているのであって,単なるプラスチックの成形品に対してお金を払っているわけではないのです。
〔以下,日経ものづくり2009年8月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 原田 衛)
ファインモールド 代表取締役