身元不明というのが,一番困る。就職するときに「あなたは誰?」と聞かれて, 「身元不明です」と答えたら,きっとそう言った途端に放り出されてしまうだろう。そもそも人間は生まれたときから,よほど何かの理由がない限り,身元がちゃんと分かるようになっている。身元とは,その人の生まれや境遇,現在までの経歴のことをいう。そして身元引受人とは,ある人の身元について責任を負う人のことだ。だから,身元が不明だったら責任など負えやしない。そう,さまざまな場面で身元は大切になる。

 このように,身元なんて普段は気にしないが,何かあったときや何かをしようとするときに重要になるし,その身元が分かるといろいろな対応を取れることが多い。

 さて,この身元,人間だけかと思ったら,異物にもあるというから驚いた。食品に混入する異物は多くの場合,厄介者。しかし,異物の生い立ち---つまり,異物の身元が分からなければその混入を防ぐことは難しいし,流通管理上の対策も立てられない。

 そんな異物の身元調査を専業にしている会社がある。ハウス食品分析テクノサービス(本社千葉県四街道市)だ。世界にもまれな,食品に混入する異物の身元にこだわり続けている会社である。

〔以下,日経ものづくり2009年7月号に掲載〕

電子線マイクロアナライザ
構成元素を分析し,異物を特定したり混入時期を推定したりする。

多喜義彦(たき・よしひこ)
システム・インテグレーション 代表取締役
1951年生まれ。1988年システム・インテグレーション設立,代表取締役に。現在,40数社の顧問,NPO日本知的財産戦略協議会理事長,宇宙航空研究開発機構知財アドバイザー,日本特許情報機構理事,金沢大学や九州工業大学の客員教授などを務める。