「実践モジュラーデザイン」は,部品の種類に対して相対的に製品の多様化を図り,収益を改善するための「モジュラーデザイン(MD)」について,科学的・体系的に解説するものです。

 部品種類の発生を抑制する基本的な手段は,設計諸元用の数値を使用制限することである。例えば,テーブルの幅に使用する数値は2000/2200/2400mmの3種類,奥行きは400/500/600mmの3種類の中から選ぶことをルールにすれば,テーブルは3×3の9種類しか生まれない。

 設計諸元用の数値を使用制限するために「この表の中にある数値だけを使うこと」という数値表を用いる。代表的な数値表としては,最少の製品(部品)数で最大の顧客を獲得できるようにするための等比数列「ISO 3:1973(E)“ Preferred Numbers─Series ofPreferred Numbers”(日本版は「JISZ 8601標準数」)」と,部品と部品の組み合わせが容易になるようにするための等差数列「ISO建築モジュール数」がある。

 ここでは,この二つの数値表を「モジュール数値表」と呼ぶ。そしてモジュール数値表の中の数値を「モジュール数」,部品諸元にモジュール数を適用して標準部品に設定した部品を「モジュール部品」と呼ぶことにする。

〔以下,日経ものづくり2009年7月号に掲載〕

日野三十四(ひの・さとし)
モノづくり経営研究所イマジン 所長,日本IBM 顧問

1968年に自動車メーカーに入社。1980年にトヨタ自動車のベンチマーキング開始。1988年にトヨタの部品共通化能力を超える手法を目指し,MDの研究を開始。2000年に経営コンサルタントとして独立。2002年に『トヨタ経営システムの研究』(ダイヤモンド社)を出版(韓,台,米,タイ,中で翻訳出版)。2003年に日本ナレッジ・マネジメント学会から研究賞受賞。2003年から日韓の重工業や電機メーカーなどでMDをコンサルティング。2007年に“製造業のノーベル賞”といわれる米Shingo Prizeから研究賞受賞。2008年から日本IBM顧問。