「新人にも分かる 工場安全のツボ」は,生産現場における本質安全構築の基礎を学べるQ&A方式のコラムです。現場で悩むことの多い工場安全の疑問とその回答を通じて,真の工場安全を実現するために必要な考え方や手法を紹介していきます。

【Q1】爆発性雰囲気で機械を使う場合,爆発のリスクに応じた安全対策が必要になると聞きました。爆発のリスクはどのように把握するのですか?

 本連載の第9回(本誌2008年12月号)で,爆発性雰囲気のある工場や事業所内の空間は,爆発リスクに応じて「ゾーン」と呼ばれる基準に基づいて分類されることを紹介しました。爆発への対策(防爆)は,このゾーン区分に従って検討します。ゾーンの区分は,リスクが大きい順に「ゾーン0」「同1」「同2」となります。

 ゾーン区分を決定する際にリスクの見積もりが不十分だと,思わぬ爆発事故が起きかねません。とはいえ,防爆対策に掛かるコストなどを考えると,リスクがそれほど大きくない場所にまで最高レベルの防爆対策を実施するというわけにもいきません。そういう意味では,防爆と一般的なリスクアセスメントの考え方は全く同じです。リスクに応じた方策を採用するわけです。

 従って,ゾーン区分の決定を適切に行うことが大切になります。ゾーン区分の決定は,法令や規格で定められた手順に従って行います。

〔以下,日経ものづくり2009年7月号に掲載〕

西原一寛(にしはら・いっかん)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
IDEC技術本部規格安全ソリューションセンター室長。各種検出制御機器・機械安全制御機器・防爆安全制御機器の製品開発および事業企画に従事。現在,安全関連の講演のほか,機械装置メーカー/ユーザーに対し,リスクアセスメント支援を行う。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。
前田育男(まえだ・いくお)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
機械,制御,安全,防爆などに関する国際規格,欧州・北米各国規格/規制に基づく製品認証関連業務やリスクアセスメント支援に従事。現在,制御・安全技術に関するIEC(国際電気標準会議)の委員をはじめ,ロボット技術,防爆技術,機能安全技術,半導体製造装置関連の標準化活動に携わる。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。
関野芳雄(せきの・よしお)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
安全制御設計技術者として多くの製品開発に携わり,現在は,グローバルに通用する本質安全設計/安全防護の考え方などの安全技術指導や安全システム設計に従事。ISOロボット安全規格作成の国際委員としての経験を基に,機械メーカー/ユーザーに対する各種リスクアセスメント支援を行う。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。
岡田和也(おかだ・かずや)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
安全機器,システム,ネットワークなど,安全制御設計技術者としての経験を有し,現在は,ロボット制御セル生産システムのリスクアセスメントや安全システム設計に従事。ISOロボット安全規格の国際委員会委員,安全応用研究会専門委員会委員などの規格関連委員を務める。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。