潤滑膜を薄くしてヘッド浮上量を縮小

 「面記録密度1Tビット/(インチ)2を実現するための重要な技術の一つと考えている」─。関西大学 システム理工学部 機械工学科准教授の谷弘詞氏の研究グループは,ハード・ディスク媒体の面記録密度の大幅な向上につながる技術を開発した。ディスク媒体の「潤滑膜」を薄くする製造手法である。

 潤滑膜は,水分や有機ガス,磁気ヘッドとの摩擦などからディスク媒体を保護するために,媒体の最表面に塗布するもの。潤滑膜を薄くすることで磁気ヘッドとディスク媒体との距離,いわゆるヘッド浮上量が小さくなり,面記録密度が向上する。今回,潤滑膜の厚さを現行品の2/3程度の約1.1nm に薄型化するメドを付けたという。これにより,ヘッド浮上量を現行品より0.6nm程度小さい1.4nmに縮小することが可能になる。これは,「1Tビット/(インチ)2を達成できる」(谷氏)値である。現在,市場で手に入る高密度な品種である1枚(1プラッター)当たり500Gバイトの3.5型HDDの場合,面記録密度は約400Gビット/(インチ)2。1Tビット/(インチ)2は,現行品の2倍以上の密度に相当する。

『日経エレクトロニクス』2009年6月15日号より一部掲載

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