2009年5月19日,日本政府は「2009年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術の振興施策)」を公表した。2009年版の大きな特徴は,「世界同時不況」の現状を過去の不況時と比べて分析した上で,これからの日本の製造業に指針を示したことにある。

 過去の不況とは,1991年2月から始まった「バブル崩壊」,1997年5月からの「金融危機」,2000年11月からの「ITバブル崩壊」の三つ。これらと比べて,2007年10月から減速が始まった今回の不況は,生産額と輸出額の落ち込みの急激さが際立つ。当初は過去の不況と同様に緩やかに低下していたものの,米国の大手証券会社のLehmanBrothers社が破綻した2008年9月を境に,ストンと音を立てるかのように落下した。

 しかも,今回の不況では広範な業種が影響を受けている。例えば,ITバブル崩壊時は,電機や通信業界が大きなダメージを受ける中,自動車や化学業界は堅調に推移した。これに対して今回は,内需はもちろん,欧米に加えて新興国の需要も落ち込み,鉄鋼や化学,一般機械,電機,輸送機械といったすべての業界で,生産額と輸出額が急減している。

〔以下,日経ものづくり2009年6月号に掲載〕