写真:栗原克己

 親会社の幹部が子会社のトップに天下るということが,日常の風景になっています。ところが,それが日本のものづくりの力を低下させる原因になっているのです。何しろ,子会社の仕事内容や現場のことを全く知らない人が,ある日突然トップとしてやって来るわけですから。その連中はたいてい,ゴルフして,高級店で飲み食いし,慣例で決まった4年ほどの任期を楽しく過ごしたらハイ,さようなら。上が腐れば下も腐っていくのは当たり前だよ。

 天下りそのものが悪いとは言いません。適材適所でやるのならいい。でも,現実にはそうじゃない。要するに,格付けで天下りをやっておる。例えば,親会社の副社長だった人は一部上場の子会社のトップに,ただの取締役だったら非上場の子会社に,なんてね。適性なんてまるで考慮しない。これじゃ,子会社側はたまったもんじゃない。

〔以下,日経ものづくり2009年6月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 原田 衛)

佐伯弘文(さえき・ひろぶみ)
シンフォニア テクノロジー 代表取締役会長
1939年兵庫県生まれ。1962年東京外語大学英米科卒業。同年日本ガイシ入社。1964年神戸製鋼所入社。1993年同社取締役。1996年常務取締役。1999年専務取締役。同年より機械カンパニー(現機械エンジニアリングカンパニー)執行社長を兼任。2000年神鋼電機(現シンフォニアテクノロジー)社長に就任。神戸製鋼所時代に事業部やカンパニーを立て直した手腕を生かして短期間に神鋼電機を再生。2007年6月に現職。現在もなお同社の伊勢製作所や豊橋製作所に毎月,足を運んで現場主義を実践。趣味はテニス,スキー,オペラや音楽の鑑賞と幅広い。『会社はムダの塊だっ!』(幻冬舎),『親会社の天下り人事が子会社をダメにする』(日本経済新聞出版社),『だから二世・三世経営者はダメなのだ!』(ワック)などの著書がある。