雑誌 Cover Story

2020年へのCO2削減戦略

メーカー6社の研究開発リーダーが語る

2009/05/19 16:00
 

 世界の自動車産業にとって、これからの10年は、まさに生き残りをかけた10年になる。完成車メーカー各社は経済危機に耐えつつ、環境問題への対応を進めなければならない。経済は待てば回復しても、環境問題への対応は、一つ間違えば企業の存続を大きく左右する。環境サバイバルレースの幕が切って落とされた。

Part 1:95g/kmへの道

ハイブリッドか究極の内燃機関か 車体質量は200kg軽量化に挑む

これからのクルマの競争力は燃費で決まる─。低価格のハイブリッド車が冷え切った市場を活性化する今、完成車メーカー各社はパワートレーンの改良と車体の軽量化に研究開発を集中し始めた。各社の研究開発リーダーが明らかにする燃費向上シナリオから、今後10年のクルマの進化を探る。

 「2020年に95g/km」─。日本の2010年度燃費基準に対し、燃費を1.87倍に向上(CO2排出量は欧州の測定モード、2010年度燃費基準は10・15モード)することを求める厳しいCO2排出基準が、長期目標として語られ始めた(図)。もともとはEU(欧州連合)が長期ビジョンとして掲げた数字だが、これが世界の自動車メーカーにとって、事実上の開発目標になりつつある。
 2009年3月に開催された第79回ジュネーブモーターショーで、トヨタ自動車は欧州で初公開した新型「プリウス」(p.26に関連記事)のCO2排出量「89g/km」(欧州混合モード)を大きくアピールした。
 一方、ドイツVolkswagen(VW)社のブース。このショーで同社が公開した新型「Polo」をベースに燃費を向上させたコンセプト車「Polo BlueMotion Concept」のCO2排出量は、新型プリウスを下回る87g/kmだ。VW社はこのクルマを2010年にも商品化する計画。87g/kmの表示の目立たせ方はプリウスよりも控えめだったが、1.2Lの直噴ターボディーゼルエンジンにアイドリングストップ機構を組み合わせ、ハイブリッドに対抗するという強い意思が、この数字に込められていた。「これからの技術開発競争はVolkswagen社とトヨタの一騎打ちになる」と、野村総合研究所グローバル戦略コンサルティング一部長の北川史和氏は両社の戦略の違いに注目する。

以下,『日経Automotive Technology』2009年7月号に掲載
図1 各国でCO2排出量の削減が進む
日米欧各地域のCO2排出削減トレンド。欧州規制の2020年95g/kmは長期目標値。日本の数値は、燃費基準から逆算して求めた値。2020年に115.5g(20km/Lに相当)は本誌による予測。米国規制は、カリフォルニア州で2007年に提案されたもの。その後ブッシュ政権下で否定され、大幅に緩い「エネルギー自立・安全保障法」が成立した。オバマ政権はカリフォルニア規制を参考にしながら、大幅な燃費規制強化に乗り出す公算が強い。燃費規制への対応技術は、日本ではハイブリッド車が重視されているのに対し、欧州ではディーゼル車が主流。

Part 2:メーカー6社が語るシナリオ

トヨタ自動車:プリウスの低価格はハイブリッドのコスト削減の成果

高級スポーツカー、大型ピックアップの開発を継続。燃費向上には車両のダウンサイズが必要。今後はハイブリッドがディーゼルを置き換える可能性も。

各国で燃費規制が強化されています。その対応は。

 消費者にとっては燃費規制に適合しているかどうかなど関係ありません。2015年とか、2018年に石油生産がピークに達し、その後は減っていくという「ピークオイル説」がありますが、もし本当にそうなったら、ガソリンの価格は大幅に上がる。お客さんが払える金額を超えてしまったら、クルマに乗り続けていただくことができません。当分はハイブリッドで対応できると思いますが、せいぜいガソリン価格が250円程度まででしょう。300円になったらきついかもしれません。
 水素を使った燃料電池車も研究していますが、まださまざまな問題がある。そうすると、次は供給が安定していてインフラも整っている電気ということになります。ここ10年くらいはハイブリッドでもつのではないかと考えていますが、電気の時代に備えて、電池の性能向上にもしっかり取り組まなくてはなりません。現在の性能では、まだ到底足りませんから。

以下,『日経Automotive Technology』2009年7月号に掲載

日産自動車:CVTを大幅に改良、2020年にはEVを10%以上に

小型車シフトは単純には進まない。「3リッターカー」を1〜2年以内に商品化。2020年にはどんなクルマにもハイブリッド技術が載る。

米国も含めて世界的に小型車シフトが起こると予想されています。

 私は10年以上米国に住んでいたことがありますが、その経験からいうと、小さいクルマは米国の風景に合いません。過去にも何回か小型車シフトが起こったことがありますが、ほとぼりがさめると、また大きいほうへ戻るという繰り返しです。確かに短期的には小さいほうへシフトするかもしれませんが、長い技術開発の方向を、一時的な現象で見失ってしまうのは良くないと思います。

以下,『日経Automotive Technology』2009年7月号に掲載

ホンダ:当面はハイブリッドに軸足 新興国向けスモールカーを開発

プラグインハイブリッドは大事な技術。中・大型車向けに2モータのシステムを検討。スモールカー向けにはディーゼルも。

2008年12月の社長会見では、V型10気筒エンジン搭載の「NSX後継車」の開発を中止し、電動車両や小型車の開発に経営資源を集中することを明らかにしました。

 時代の流れが大型車から小型車に向かっているということは比較的明確なのではないかと思います。こういう流れは、今の経済危機になる前から、燃料価格の高騰や燃費規制の強化によって、出てきていましたから。NSXの後継車種は、企業のブランドイメージ向上という観点から開発に取り組んでいましたが、こういう経済環境での開発中止は自然な判断だと思います。

以下,『日経Automotive Technology』2009年7月号に掲載

マツダ:ガソリン、ディーゼルとも新燃焼コンセプトで燃費大幅向上

Ford社との関係では部品共通化の前提を外す。内燃機関の燃焼改善と自動変速機の改良で2015年までに燃費を30%向上。ハイブリッド車の取り組みは段階的に。

今回の経済危機で、研究開発費を絞り込んでいる分野はありますか。

 商品開発の効率をいかに上げるかという観点で見直しています。これまで10のグレードを用意していたとしたら、本当にそれだけ必要なのか、開発だけでなく、営業、生産、サプライヤーまで巻き込んで絞り込んでいます。従来、ともすれば各国の営業担当者から言われるままに開発している面がありましたが、ユーザーに提供する価値を再確認し、効果的な見直しができたと思っています。ただ、環境関連の研究開発投資は削っていません。

以下,『日経Automotive Technology』2009年7月号に掲載

三菱自動車:軽量化しなければ燃費は下がらない EVの次はプラグインHEVも

主力車種の190kg軽量化を目指す。可変バルブリフト機構は生産準備を終えている。プラグインハイブリッド車(HEV)の試作にも着手。

燃費向上についての考え方を聞かせてください。

 まず軽量化から話をさせてください。2007年8月に発売した「ギャランフォルティス」は当社にとって乾坤一擲(けんこんいってき)のクルマで、走りを徹底的に追究しました。ただ、その副作用として、他社とベンチマークしてみると、70kgほど車体が重くなってしまいました。
 そこで、現職になってから、190kg軽量化するぞと号令をかけました。そのための候補となる技術が、この3月までに集まりましたので、一通り説明を聞いて、これをどう実行するか、計画を詰めているところです。このうち70kg程度は大規模な部分改良で、それ以上の軽量化は全面改良のタイミングで実行することになるでしょう。

以下,『日経Automotive Technology』2009年7月号に掲載

富士重工業:2010年に新型エンジン投入 今後10年で200kg軽量化

エンジンと変速機の改良で2015年規制の達成にめど。軽の自社生産から撤退しても電気自動車の開発は継続。車体の軽量化は鋼材中心で。

燃費向上が、どの完成車メーカーにとっても大きな課題になっています。ガソリンエンジンの燃費向上はどう進めていきますか。

 燃費を向上させた新世代の水平対向エンジンを2010年に市場投入します。排気量は2.0Lが中心の4気筒エンジンで、直噴や可変バルブ機構などに頼らず、まずはベースとなる燃焼を改善し、摩擦損失を減らすことで、どこまで燃費を良くすることができるか、チャレンジしているところです。
 欧州では2020年までにCO2排出量を95g/kmまで減らすなどという話も出てきていますが、できるだけハイブリッド技術などに頼らず、ガソリンエンジンの燃費向上でクリアしたいと思っています。

以下,『日経Automotive Technology』2009年7月号に掲載

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