坂本 和秀
ナショナル セミコンダクター ジャパン

スイッチング・レギュレータの回路を工夫することによってスイッチング周波数を高め,小型化と出力の低電圧化を両立できるエミュレーテッド電流モード(ECM)制御をNationalSemiconductor社が開発,既に製品化している。電流モード制御のそれまでの問題点を挙げながら,多様化する要求にどう応えたのかを解説する。エミュレーション技術を利用した他の製品も示す。(本誌)

スイッチング・レギュレータの制御方式を改良

 高効率にして発熱量を抑えたい,1V以下の低電圧を供給したい,スイッチング周波数を高めることで電源の回路面積を小型にしたい─電子機器の電源に対するニーズは高度になる一方だ。こうした多様な要求に応えられるように,降圧型スイッチ ング・レギュレータは進化を続けてきた。

 スイッチング・レギュレータの制御方式の中で,現在よく使われているのはPWM(pulse width modulation)方式の電流モード制御である。出力電圧を安定化させやすい,電磁雑音の発生を抑えやすいという利点がある。

 ただし,従来のPWM方式の電流モード制御には,スイッチングのデューティ比を一定以上に小さくできないという制約があった。このため,出力電圧を低くしようとしても下げられない,あるいは,出力電圧を低くしようとするとスイッチング周波数も下げざるを得ず,電源回路の実装面積が大きくなってしまうという課題があった。

 当社は,デューティ比を小さくすることが可能で,出力電圧を低くできる「エミュレーテッド電流モード(ECM:emulated current mode)制御」を開発し,この方式のスイッチング・レギュレータICを2005年に製品化した。

『日経エレクトロニクス』2009年5月18日号より一部掲載

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