出題と解説/ET教育フォーラム (末石 吾朗,根岸 永建,坂井 直美)
オブジェクト指向に関する記述のうち,正しいものはどれか
- システム全体を機能に着目して階層的に細かいオブジェクトに分割していくことで,全体的な構造を組み立てる
- オブジェクト間で相互にメッセージをやり取りすることでシステム全体を機能させるため,大規模で複雑なシステムには適さない
- データと操作を一体化し,内部の詳細を隠蔽して操作方法のみを公開したオブジェクトを組み合わせることで,システムを機能させる
- データと操作を定義したオブジェクトから生成したクラス間でメッセージをやり取りすることで,処理を進めていく
近年,組み込みソフトウエアの開発は大規模化・複雑化しています。一方で,開発期間は短縮化する傾向にあります。そのような状況でソフトウエア開発を効率化するために,オブジェクト指向の開発手法を導入するケースが増えています。今回は,オブジェクト指向の基本について解説します。
オブジェクト指向のメリット
従来型の構造化プログラミングでは,機能に着目してモジュール分割を行います。例えば,ファイル処理はオープンや読み取りなどの機能をモジュールに分割し,上位モジュールから適宜呼び出し可能にするのが一般的です。処理対象となるファイルの情報は,関数の引数などでモジュールに渡します。しかし,この手法ではソフトウエアの規模に比例してモジュールの階層や数が増え,管理が煩雑になります。モジュールの仕様に変更があると,その影響が広範にわたり,修正漏れやミスを引き起こしかねません。