出典:日経エレクトロニクス,2001年7月16日号,pp.94-101(記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

「ユビキタス・ネットワーク」を取り上げた,日経エレクトロニクス創刊800号特集の前半。あらゆる場所で料金を気にせずネットワークに常時接続できる社会の到来を予見し,そのときの生活者や社会の変化を考察した。現在,ユビキタス・ネットワークのインフラは整いつつあり,記事が予測した「ユーザーの生活がコンテンツに」「コミュニティー通貨の影響力が増大」といった現象も,ブログや各種のポイント/電子マネーなどの形で姿を現している。ネットワーク社会の行く先は,今でもこの記事が示した方向にあるようだ。(2009/05/08)

通信ネットワークが,生活者を取り巻く「空気」のような存在になる。料金をほとんど気にすることなく,時と場所を選ぶことなく,高速につながる環境がここ数年で当たり前になるからだ。現実世界の多くのコトやモノ,そして生活者の振る舞いはネットワークへ流れ出す。この変化は,生活スタイルを大きく変え,社会の仕組みを変える可能性を秘めている。そのとき,これまでの常識は通用しなくなる。

図1 仮想世界が現実世界と地続きに
図1 仮想世界が現実世界と地続きに
いつでもどこでもネットワークにつながる高速なユビキタス・ネットの登場で,ネットワークが生む仮想世界と現実世界は地続きになる。生活者は時と場所を選ぶことなく常にネットワーク上の仮想世界に飛び込めるようになる。仮想世界は現実世界を補完しながら,「現実」と重なっていく。(イラスト:シギハラ・サトシ)

 携帯型情報機器,ケータイから,果てはボールペンやメガネ,街角の至る所に設置されたセンサ,…。日常生活で触れ,そして利用する多くの機器や部品が高速ネットワークに「つなぎっ放し」になる(図1)。この環境が,エレクトロニクス業界が活躍する新しい市場をつくり出す。

 つなぎっ放しの環境によって,生活スタイルや社会の仕組みは大きく変化していく。それが,新しい情報通信機器に対する需要を生み出す。時と場所を選ばず,常にネットワークにつながっている環境が機器開発の前提となり,これまで非常識と考えられていた技術が常識となる。この非常識から常識への変化がエレクトロニクス技術のさらなる進化を促す(図2)。

【図2 高速なユビキタス・ネットの誕生】高速なユビキタス・ネットの登場は,これまで決して常識とはいえなかった技術や社会システムを新しい常識にする。安価で高速なネットワークの登場によって,記憶や処理の分散化が進み,多くの機器が協調動作を始める。生活者のコミュニケーションや消費の形態がこの動きと相乗効果を生む。(図:本誌)
図2 高速なユビキタス・ネットの誕生
高速なユビキタス・ネットの登場は,これまで決して常識とはいえなかった技術や社会システムを新しい常識にする。安価で高速なネットワークの登場によって,記憶や処理の分散化が進み,多くの機器が協調動作を始める。生活者のコミュニケーションや消費の形態がこの動きと相乗効果を生む。(図:本誌)
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