エレクトロニクス業界が驚くような企画力でユニークな商品を出し続けている玩具業界――。玩具業界ならではアイデアによって生み出されたデジタル家電もある。タカラトミーが2008年11月に発売したデジタル・カメラと超小型プリンターを一体化した「Xiao」だ。Xiao誕生の経緯について,同社 デジタル事業本部 デジタルエンタテイメント企画グループ IP事業チーム チームリーダーの土肥雅浩氏に話を聞いた。

――開発のきっかけについて教えてください。

タカラトミーが発売した「Xiao」
タカラトミーが発売した「Xiao」
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 タカラトミーでは,1998年に米Polaroid社と“プリクラ”サイズの用紙を用いたインスタント・カメラ「シャオ」を開発してヒットした経緯があり,カメラがコミュニケーションのツールとして非常に我々の業界とも親和性が高いことを認識していました。時代がデジタル・カメラに移る一方,社内ではデジタル・カメラを開発できないので,企画やデザインは我々でやり,台湾や中国の協力会社に具現化してもらっていました。

 こうした中,2006年に米ZINK Imaging社から小型でインクが要らない画期的なプリンターができたとの連絡を受けました。そこから話を聞いていくうちに最終的にはデジタル・カメラと一体化したものができるのではないかと考え,時間をかけて開発しました。

――ZINK社はなぜ御社に話を持ってきたのですか。

Xiaoの背面
Xiaoの背面
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 Polaroid社と開発したシャオは日本のみならず,米欧でも若者を中心に非常に受けました。ZINK社の開発陣は,それをよく覚えていてくれました。単純にカメラを出すだけなら,いろんなカメラ・メーカーがいらっしゃいます。ただ,ユーザーにどう遊んでもらうのか,どのようなメニューや機能を盛り込めば楽しめるのかということを考えると,我々とやることにメリットを感じてもらったようです。

――カメラとプリンターを分割することもできたと思いますが,最初から一体型を目指されたのでしょうか。

 早い段階から一体型に決めていました。インスタント・カメラのときのように撮ったその場で写真をすぐに渡すという文化はあるはずです。ですが,デジタル・カメラがこれだけ普及しているにもかかわらす,デジタル・カメラで撮った写真をそのまますぐにプリントできるものは,「ありそうでない」というのが実状でした。ですから,プリンターを内蔵したデジタル・カメラは非常に分かりやすいコンセプトだと思いました。

 少し前まではどの家庭にもアルバムがあり,写真を撮った後でも思い出を楽しむ文化がありました。最近ではそれが希薄になっていると思います。デジタル・カメラでもその場ですぐプリントできれば,新しい遊び方をまだまだ発掘できるのではないでしょうか。

――エレクトロニクス技術が満載ですが,開発はどのように進めたのでしょうか。

 我々にも開発に近いメンバーが二人,マーケティングのメンバーが二人いますが,エレクトロニクス技術に精通しているわけではありません。ですから,協力会社さんの知恵を集結してもらった形です。ただ,我々は専業のカメラ・メーカーのように開発力はありませんので,高品質や高機能といった面では追い付くことは難しいでしょう。ただ,80%のリソースでどう料理するのかが我々の勝負どころだと思っています。

――価格は3万4800円とのこと。玩具業界では高いですが…。

Xiaoのプリンター部分
Xiaoのプリンター部分
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 現在,小型の簡易プリンターが9000~1万円台中盤で売られています。デジタル・カメラは500万画素程度のものが低価格のもので1万~2万円です。それを一体化したとすれば,おおよそ3万5000円くらいと考えています。実は原価から積み上げてもこれくらい掛かっています。協力会社に低コストにできるところばかりを使うと,ソフトウエアの加工やデザイン性など我々の思うようにはいかなくなります。やはり協力会社にも我々と組むメリットを感じてもらわないといけません。

 今回の製品は,日本で我々がやってきた昔のシャオが非常にヒットしたことや,日本でヒットを出したデジタル・カメラは世界的にも通用する可能性があることを協力会社に感じてもらっていたため,良い関係が構築できました。

――発売しての反響はいかがでしょうか。

 大きな反響を頂いています。テレビや雑誌などのメディアからの取材が多かったのに加えて,流通業者の皆様からの反応も高かったです。画素数といったこれまでのデジタル・カメラの競争軸とはちょっと方向性が異なるところに注目してもらっているようです。そのため,Xiaoは玩具売り場ではなく,カメラ売り場に置いてあります。海外展開についてもいくつかのパートナーと話を進めています。一般消費者だけでなく業務用途といったB to Bでのお話も頂いております。実際に発売しましたので,今後はユーザーがどのように使っているのかを分析しながら,もっと製品を磨き上げていくつもりです。