数多くのエレクトロニクス企業が今,健康管理市場になだれ込もうとしている。その動きを見ていくと「オープン」か「クローズド」かという二つの異なるアプローチがある。ただし,新分野への展開を模索するエレクトロニクス企業にとってこの市場に懸ける思いは皆,同じである。

健康管理に関するエレクトロニクス企業の動きが活発に

 健康管理市場へと向かうエレクトロニクス企業の足音が,ひときわ大きくなってきた。2009年に入り,数多くのエレクトロニクス企業が,健康管理市場になだれ込もうとしているのだ。

 例えば,米Intel Corp.が中心となって設立し,世界の健康管理市場の開拓などを進める非営利団体「Continua Health Alliance」は,2009年2月上旬に東京で記者会見を開催。この場で,14社のエレクトロニクス企業が,健康管理市場に向けた機器や部品,サービスなどの開発に取り組んでいることを明らかにした。

 その数日後には,米IBM Corp.と米Google Inc.が健康管理分野の取り組みで協力することを発表。IBM社が新たに開発したソフトウエアとGoogle社が米国で展開するWebサービス「Google Health」を融合させて,利用者の健康管理などの利便性向上を図るという。

 パナソニックは2009年3月,「ヘルスケア向け」と銘打つパソコンを発売。従来のパソコンとは異なるユーザー層を開拓する構えである。

 2009年4月には,NECとパナソニックメディカルソリューションズ,日立製作所の3社がそれぞれ,任天堂のゲーム機「Wii」と健康ゲーム・ソフト「Wii Fit」を利用した特定保健指導システムの提供を始める予定だ。

 これらは,健康管理市場へと向かう足音のほんの一部にすぎない。水面下でうごめく動きも含め,実にさまざまな取り組みを今,国内外のエレクトロニクス企業は進めている。

 電子機器やWebサービスといったITツールを活用して,家庭や個人における健康管理の利便性や効果を高めることに期待が集まっている。ITツールを利用して,日常生活における日々の健康データを連続的かつ手軽に測定・管理し,そのデータに基づいた指導サービスなどを簡単に受けられるようにすれば,より効果的に生活習慣を改善したり病気の兆候をつかんだりできる可能性があるからだ。

 ITツールを活用した健康管理は,「Web 2.0」という表現を模して業界の一部では「ヘルス2.0」とも呼ばれている。こうした言葉が使われ始めていること自体,健康管理が新たな局面に差し掛かっている表れにほかならない。大手健康機器メーカーであるオムロンヘルスケアが,2008年10月に「ネットヘルスケア事業開発部」を立ち上げたのも,それを端的に示しているといえるだろう。

『日経エレクトロニクス』2009年3月23日号より一部掲載