携帯電話関連の世界最大の展示会「Mobile World Congress 2009」が開催された。世界の大手携帯電話事業者の多くが将来的なLTE(long term evolution)の採用を計画する中,移行までの数年の間,携帯電話サービスをどのように進化させるかが焦点となってきた。高機能な端末の開発に腐心するメーカーは,差異化のためのサービスにも力を入れ始めている。移動体通信方式では,LTEの手前に位置する技術が今後数年の主役になる兆しが見えた。

[携帯電話機]
ついに「HDケータイ」も登場
アプリ販売の主導権争い始まる

 「世界の携帯電話機出荷台数は減少傾向にあるが,スマートフォン市場は今後5年間,年率15%で成長すると見込まれている」(台湾Acer Inc.,Senior Corporate Vice President,President of Smart Handheld Business GroupのAymar Lencquesaing氏)。

 2009年2月16~19日にスペインのバルセロナで開催された「Mobile World Congress 2009」(以下,MWC)では,世界の主要メーカーの多くが高機能端末市場への期待を口にした。

 MWCで大手端末メーカーが発表した主力機種は,その訴求点が驚くほど似通っている。「タッチ・パネル操作」「500万画素超のカメラ」「720p動画の記録/再生」などである。各社の目指す方向が同一で,差異化が難しくなりつつある様子が鮮明になった。メーカーは,一部の機能を際立たせた端末を開発したり,自社端末のユーザー向けサービスを自身で手掛けたりするなど,活路を見いだすのに躍起だ。

[移動体通信方式]
LTEに向けた技術が出そろう
景気悪化で3Gの延命策も有力に

 「LTEの商用サービスを米国で2010年に開始し,2015年までに米国全土に展開する」──。米Verizon Communications社 Executive Vice President and Chief Technology OfficerのDick Lynch氏はMWCの基調講演で,Verizon Wireless社によるLTEの商用化時期について語った。同社は以前から2010年に開始したいとの意向を示していたが,それをあらためて明言した。

 NTTドコモや中国China Mobile Ltd.など,世界の複数の携帯電話事業者が2010年以降に順次LTEのサービスを開始する意向を表明する中,無線アクセス用のチップセットや基地局用ハードウエアを提供するメーカーはLTEに向けた製品をアピールしていた。その一方で,LTEへの移行が本格化する2012年ごろまでの間も携帯電話サービスを進化させるための通信方式の提案もあった。