プロローグ
バッファローの憂鬱

第1部<課題の露呈>
無線LAN市場の成長に暗雲
米国で相次ぐ特許訴訟

 年間で4億個近いチップセットが出荷されるほど多くの機器に広まった無線LAN。そのバラ色の未来に,特許問題という暗い影が差し始めた。無線LAN関連の特許侵害を主張する企業による大型の訴訟が米国で相次ぎ機器メーカーら30社超が訴えられる状況になったのである。これは始まりに過ぎず,別の規格や別の特許権者による訴訟を招く可能性もある。標準化と特許の新しい枠組み作りのために残された時間はそう長くない。

第2部<解決への道>
もう「知らないふり」は許されない
標準化団体も特許と向き合う

 無線LANの特許問題は,標準化団体の特許の取り扱いにおける問題点を浮かび上がらせた。特許を保有する企業に対して公平なライセンス条件を要求する「特許ポリシー」は標準規格を策定するまでは有効に機能する。しかしその後の特許の利用で起こる問題については,標準化団体は目を背けてきた。標準規格がある限り,特許ライセンス収入の増加を狙う特許権者が絶えることはない。数の論理で個の動きを封じ込めるために,標準化団体もついに重い腰を上げた。