【トヨタ流人づくり 第9回】品質とクレーム対応の妙 不満一つで失う将来のお客様

「だから,部下が動く トヨタ流 人づくり」では,今,多くの日本メーカーの管理者が頭を悩ませている社員の人材育成に関して,トヨタ自動車の考え方や方法を伝授します。社員にやる気とモチベーションを与え,自ら動く組織をつくるための直接的,間接的なヒントが満載です。本コラムは中部産業連盟が開催するセミナー「トヨタ流モノづくりと人づくりの心・伝承塾」講座の講演内容を編集部が取材し編集したものです。

 お客様からクレームが来た─。商品を造って提供するものづくり企業にとって,この時ほど身が引き締まる思いをするものはないといっても言い過ぎではないでしょう。できることなら,かかわりたくないと思う人もいるかもしれません。
 しかし,どんなに一生懸命に良い商品を造ろうと努力していても,前回紹介した通り,既に欲求段階の最上位にいるお客様を完全に満足させることは至難の業です。そのため,お客様のクレームに対しては,完全に逃れることはできないのです。しかも,万が一,クレーム対応に失敗すれば,その特定のお客様からの信頼を失うだけでなく,企業の存続を危うくするほど大変な事態を招きかねないことは,今さら言うまでもないでしょう。(以下,「日経ものづくり」2008年12月号に掲載)