家庭や事業所の片隅に,ひっそりと設置されている電力メーター。その機能が,今後数年で大きく変わる可能性が出てきた。電力メーターに,無線通信機能や家庭内の機器を制御する機能を搭載し,エネルギー利用の監視や制御に利用しようとする動きが,欧米の電力事業者を中心に活発化しているからだ。この動きが世界に広がれば,送受信ICなどの新たな巨大市場を生み出すだけでなく,家電機器のネットワーク化を強く推し進めることにつながりそうだ。

 2008年10月初旬。カナダ西部の大都市であるバンクーバーで,ある無線ネットワーク技術団体の内部会合が開かれた。4カ月に1度開催されるそのミーティングは,世界中から無線関係者が集うことで知られる。そこに出席した無線ICメーカーの担当者は,ある異変に気が付いた。出席者の中に,PG&E社(Pacific Gas and Electric Co.)や,SCE社(Southern California Edison Co.)といった,米国の大手電力事業者の担当者が数多く名を連ねていたのだ。