研究用途での実用化にとどまっていたDNAチップ。しかし今,産業用途にも市場が広がりだそうとしている。これが,DNAチップ開発の風向きを大きく変えることになりそうだ。拡大する市場規模や要求性能の変化によって,業界の構図が一変する可能性も出てきた。

 「開発を進めるメーカーにとって,一つのターニング・ポイントとなる時期に来ている」─。2000年前後に市場が立ち上がり始めたDNAチップ。その研究開発に携わる物質・材料研究機構 生体材料センター センター長の宮原裕二氏は,DNAチップを取り巻く現在の状況を,このように語る。

 2007年から2010年にかけて,DNAチップの市場が研究用途のみならず産業用途にも広がろうとしている。これまでは,研究機関や大学などに向けた研究用途としての実用化にとどまっていた。それが今,医療の現場で診断ツールとして利用する,食品の安全性を検査する,といった産業用途への展開が進む段階に差し掛かっている。この変化が,DNAチップ開発の風向きを変えることになりそうだ。