第1部<研究開発 新時代>
自社の殻に閉じこもらない
あらゆる分野で他社と協業

 世界中に研究開発拠点を設立するIBM社の狙いは,「エネルギー・環境」「ITS」「メディカル」「農業」など新分野への参入である。かつてパソコン,HDDなどの産業を生み出した同社は再び,次代を担う一大産業の立ち上げに乗り出す。その方策として選んだのが,他企業や国,自治体,大学などのパートナーと共同で研究所を設立・展開する「コラボラトリー」構想である。米国特許取得件数1位を続ける同社の構想が的中すれば,日本勢は太刀打ちできなくなる可能性がある。

<研究トップに聞く>
世界の変化に合わせて
IBM Researchも変えていく

米IBM Corp., Senior Vice President and Director of IBM Research John E. Kelly III氏

第2部<成功事例:CNSE>
次世代技術開発の先端拠点
開かれた体制で革新生む

 IBM社がコラボラトリー戦略の手本とするのが,同社らが主導する産官学の研究プロジェクト「CNSE」である。設立後4年ほどで250社以上の企業と連携し,1000人を超える研究者を集めることに成功した。ニューヨーク州から巨額の資金拠出を取り付けるとともに,研究成果を参加企業が適切に享受できる仕組みを取り入れた。今後,IBM社らによって,世界にはCNSEに似た研究プロジェクトがいくつも生み出されそうだ。