【事故は語る】航空機の客室与圧システムに異変 燃費改善対策が及ぼした負の影響

航空機の燃費は,エアラインの経営を左右する。燃費改善策があれば,それを講じるのは当然だ。圧縮機の汚れを落として燃焼効率を高める「エンジン水洗い」は,そうした改善策の一つとして採用されている。しかし,物事には正の側面と負の側面がある。現場の品質管理体制が甘くなったとき,事故は起きた。

 2006年7月5日,福岡空港を離陸してから約50分が経過した全日本空輸2142便(成田国際空港行き)の客室で,乗客の目の前に酸素マスクが落下してきた。客室の気圧が安全上の基準を下回ったので,システムが自動的に作動したのだ。
 当初,大多数の乗客はマスクをすぐには着用せず,周囲を静観していた。異常を想起させるような出来事は何も起きていなかったからだ。客室乗務員は後に「耳に『ツーン』とくることもなく,問題はないように見えた」と証言している。(以下,「日経ものづくり」2008年8月号に掲載)

図●客室与圧システム
図●客室与圧システム