「40年ぶりの国産ジェット旅客機」は,果たして電機・自動車業界に何をもたらすのか。「MRJ」をキッカケに動き出す,航空機産業の意外な波及効果の深層を探った。(進藤 智則)

第1部<意外な波及効果>
航空機産業育成にソフトの視点
安全・高信頼技術の先導役に

 三菱重工業のMRJ,ホンダのHondaJet など,日本で民間航空機市場への参入が続いている。高い信頼性・安全性が求められる航空機の開発を通して高品質のソフトウェアを開発する技術を培えば,その技術は電機業界や自動車業界など他の産業界にも好ましい波及効果を与えそうだ。

<MRJの開発統括者に聞く>
三菱航空機 宮川淳一氏 インタビュー

第2部<最大のハードル>
型式証明への取り組みは官民で
世界進出のためにも対策は必須

 国産ジェット旅客機の技術波及効果を電機・自動車業界が享受するにはまずは旅客機プロジェクトの事業としての成功が欠かせない。40 年間の旅客機開発のブランクがある日本にとってその最大のハードルとなるのが政府による航空機の安全性審査「型式証明」だ。

第3部<航空機のソフトウェア>
DO-178Bは要件やテストを重視
安全性評価は別規格で対応

 航空機向けソフトウェアはどのように作られるのか。その基盤となるのが,航空機向けソフトウェア開発のガイドライン「DO178B」である。要件のトレーサビリティ確保やソフトウェア・テストを徹底するという信頼性重視の考え方が貫かれており航空機業界だけでなく,自動車業界にも広がり始めている。