日経テクノロジーオンライン
雑誌 Cover Story

脱レアメタル脱レアアース

田野倉 力
2008/07/21 17:07
 

【特集】脱レアメタル脱レアアース


Part.1:総論

レアアースが供給そのものを絶たれる可能性がでてきた。
Ptの供給は心配ないが、価格の上昇が止まらない。
クルマを造ろうにも、素材がなくて造れない時代。
資源を支配する国や企業に利益を吸い取られる時代。
技術者はどう生き抜いていけばよいのか。

 20XX年、中国政府はレアアースすべての輸出割り当て量をゼロにすることを決定した。2008年当時に25%だった輸出税は年々上がり、200%を超えている。一方で中国の自動車産業は急成長を続け、特に米国市場では日本と完全に競合するようになった。日本車の攻勢に対し「1割産業である自動車を救え」という声が上がった。国際協調を主張する国家主席も「レアアースを輸出するのは非国民」という批判に耐えることはできなかった。レアアースの90 %を中国から輸入している日本にとって、レアアースの入手難は痛手。残りの10 %を輸出するフランスやエストニアが大幅な“便乗値上げ”に走ることは間違いなく、特に中国製と競合の激しいハイブリッド車は、ラインナップの見直しを迫られそうだ―。

レアメタル輸入先の上位3カ国
レアメタル輸入先の上位3カ国
(JOGMECメタルマイニングデータブックより抜粋)


Part.2:モータの磁石

最近の自動車の電動化を支えたのは同期モータだった。効率が高く、制御がしやすい。ただ1点、永久磁石にNd、Dyなどのレアアースを使うという欠点がある。SRモータ、誘導モータのように永久磁石を使わないモータとするか、高価な物質をできるだけ使わない永久磁石を開発するかの選択を迫られる。

 総論で紹介したように、永久磁石に使うNd(ネオジム)などのレアアースが手に入らなくなることを「想定」しておく必要があるだろう。欲しいのは永久磁石の要らないモータだ。選択肢としてSR(スイッチト・リラクタンス)モータ、誘導モータがある。
 SRモータの普及が進まない大きな原因は騒音であった。SRモータはロータのヨーク先端をステータの電磁石が吸引して回る。誘導モータや同期モータでは、磁力線を横切る方向に主に力が加わるが、SRモータでは吸引力がギャップを縮める方向に加わる。この吸引力がケース全体をたわませ、それが振動、騒音の原因になっていた。

長崎大学のSRモータのロータ
長崎大学のSRモータのロータ


Part.3:構造材の添加元素

1tの自動車を分解すると、350kgの特殊鋼(炭素鋼以外の鋼)が出てくるという。Ni、Cr、Mo、Mn、Vなどのレアメタルが手に入らないと、軸受鋼、ばね鋼、耐熱鋼といった特殊鋼が造れない。特殊鋼がないと、自動車はまともに走らない。これをセラミックスで解決しようという動きがある。

 レアメタルを使わない究極の解決法は特殊鋼を使わないこと。要求の厳しくないところには添加元素の少ない炭素鋼、厳しいところにはセラミックスを使う。セラミックスならばS(i ケイ素)、A(l アルミニウム)などありふれた元素で済む。ただし、今まではどんなに頑張っても金属を代替するような汎用材料にはならなかった。理由は、価格が高いこと、脆いことの2点である。

量産用制御型燃焼合成装置
量産用制御型燃焼合成装置
1バッチ当たり100kg生産できる。これが年産60t のプラントの一部


Part.4:排ガス浄化触媒

5年で2.4倍になったPt価格は、クルマの価格を押し上げる。排ガス対策がエンジンの改良だけで済んだ古きよき時代が過ぎ去った今、排ガスを浄化するためにはPt触媒を使うのが常識になっている。この触媒をやめ、電気分解で浄化するという選択肢がある。触媒は使うが、Pd、Agなど安い素材に代える研究も進んでいる。

 乗用車1台当たり1万円分以上ものPtを使う排ガス触媒。究極の対策は触媒を使わないことだ。その方向で開発を進めているのは産業技術総合研究所だ。開発しているのはディーゼルエンジン用の排ガス浄化装置で、排ガス中のNOxをN2とO2に“電気分解”する。プラスマイナスの電極を並べ、その間を固体電解質で埋める(図)。電極に電圧をかけると、固体電解質の中を酸素イオンが通る。構造は燃料電池のセルに似ている。

開発した電気化学リアクタの概略図
開発した電気化学リアクタの概略図
これは考え方で、実用時にはハニカム構造など表面積を増やす方策をとる。


Part.5:Liイオン2次電池

電池は化学反応を扱うため、多様な材料を使う。ただしLiイオン2次電池に限って言えば、あまり希少な物質は使わない。それでも、Co、Mn、Niなしでできれば、将来の不安もない。その回答になるFe系の正極材料を各社が開発している。共通する技術は炭素で被覆することだ。

 自動車用電池の場合、レアメタル・パニックへの対策はもう始まっている。Ni-MH(ニッケル水素)電池からLi(リチウム)イオン2次電池への転換がそれだ。Niはレアメタルの中では生産量も多く、手に入れやすい金属だが、電池では使用量が多く、純度の要求が高いためコストも高い。ハイブリッド車がNi-MHのまま普及すれば、大問題になっていたかもしれない。

LiFePO4正極材料(三井造船)
LiFePO4正極材料(三井造船)

マイページ

マイページのご利用には日経テクノロジーオンラインの会員登録が必要です。

マイページでは記事のクリッピング(ブックマーク)、登録したキーワードを含む新着記事の表示(Myキーワード)、登録した連載の新着記事表示(連載ウォッチ)が利用できます。

協力メディア&
関連サイト

  • 日経エレクトロニクス
  • 日経ものづくり
  • 日経Automotive
  • 日経デジタルヘルス
  • メガソーラービジネス
  • 明日をつむぐテクノロジー
  • 新・公民連携最前線
  • 技術者塾

Follow Us

  • Facebook
  • Twitter
  • RSS

お薦めトピック

日経テクノロジーオンラインSpecial

記事ランキング