【事故は語る】電動車いすによる事故が多発 安全上の問題点が浮き彫りに

2008年4月3日,京都市の市営地下鉄九条駅で78歳の女性が高さ1.3mのホームから転落し重傷を負った。電動車いすを使い始めてから3日目のことだった。こうした電動車いすを巡る事故が後を絶たない。事態を重く見た経済産業省は電動車いすの安全性調査を指示。その結果,現在の電動車いすが抱える安全上の問題点が次々と浮き彫りになった。

 調査に当たった製品評価技術基盤機構(NITE)には,電動車いすを巡る事故情報が1985年5月から2008年1月までのおおよそ22年半の間に96件寄せられた(図)。うち,半数以上の51件が死亡/重傷事故。事故原因のトップは,操作ミスに代表される「誤使用/不注意」だった。
 誤使用/不注意といえば一見,利用者側に非があるように思える。しかしNITEの調査を詳細に見ていくと,決して利用者だけを責めることはできないという事実が浮かび上がる。今の電動車いすには,操作ミスを招きやすい設計だったり誤使用したときの安全対策が不十分だったりと,安全上の問題が山積しているからだ。(以下,「日経ものづくり」2008年6月号に掲載)

図●NITEに寄せられた電動車いすに関する事故情報
図●NITEに寄せられた電動車いすに関する事故情報