「DRAM並みの性能をHDDに匹敵するコストで」─。こうしたうたい文句を掲げて米IBM Corp.が数年前に研究を開始した,スピントロニクス技術に基づく不揮発性メモリ「Racetrack Memory」の実像が見えてきた。

 Racetrack Memoryは,車のレース場のようにつながった磁性材料に情報を多数記録する。ビット列が並んだ磁性材料に電流パルスを加えると,ビット情報の間を区切る磁壁が移動する現象を利用する。印加する電流パルスの幅や数を変えることで,磁壁が何ビット分移動するかを制御できる。書き込み/読み出し用素子は固定し,そこにビット・セルを移動させて,書き込みや読み出しを実行する。