男が取り出したのは手のひらサイズの電子機器。筐体の黄色が目に鮮やかだ。黒いタッチパッドに指を滑らせる。「ジャーン」。シンセサイザー特有の電子音が鳴り響く。つまみを回す。音色が次々に変わる。ストリングス,トランペット,打楽器…。「ピュィィーン」。ゲームの効果音のような音。演奏を始めた。タッチパッドの上に指を置くとリズムが鳴り出す。音色を切り替えながら指が踊る。ビートに合わせ,音を次々と重ねる。見る見るうちに即興のダンス・トラックが出来上がる…。

 動画共有サイトの「YouTube」にはユーザーが投稿したこうした動画が300本以上ある。彼らが操るのは「KAOSSILATOR(カオシレーター)」。電子楽器メーカーのコルグが2007年11月に発売したシンセサイザーである。