無線通信用ICの1チップ化が進むにつれて,回路設計に,無線の送受信時のエネルギーの減衰や雑音の大きさの評価といった「回線設計」の知識が求められるようになっている。今回は,熱雑音など回線設計の基本知識と回線設計の手順について紹介する。(野澤 哲生=本誌)

束原 恒夫
会津大学 コンピュータハードウエア学科 コンピュータ論理設計学講座 教授

 今回は,無線システムの仕様を決めるプロセスとして重要な「回線設計」について簡単に説明する。

回線設計とは無線通信の方式設計についての表現で,英語での「link budget analysis」にほぼ対応している。つまり,無線通信が効率的かつ安定的に実行できるようにするために,送信電力,通信距離,各種の雑音,空間の伝搬損失などを考慮しながら,受信機の最小受信電力(感度)や雑音指数(NF:noise figure)といった無線システムの各仕様を決めていくことである。