第1部<閉塞感からの脱出>
クリエーターへの対価還元と
ユーザーの自由の両立へ

 視聴制御やコピー制御を目的とした従来のDRM技術の限界が見えてきた。コンテンツの海賊行為の防止に権利者が満足できるほどの効果を持たない一方で動画共有サイトに代表されるインターネット上の新しい活動を阻害してしまうからだ。「コンテンツをより多くのユーザーに届けたいが,それが生み出す価値は低下させたくない」。権利者のこうした閉塞感を打開するのは,コンテンツの新しい流通形態を実現する技術だ。従来の発想を超えて,新しいDRMの枠組みを用意する必要がある。

第2部<転生を支える技術>
新型DRMへの要求を推進力に
電子指紋と電子透かしが離陸

 動画共有サイトのような新しい流通形態を活用したいがそれを許すことは自分たちのコンテンツの崩壊につながるかもしれない─。メディア企業やクリエーターのこうした不安を払拭できる可能性を持つのが電子指紋技術や電子透かし技術などを用いてコンテンツを識別し,そこの流通でお金を生む仕組みだ。10年来研究が続いてきたこれらの技術が,新たなDRMの枠組み作りという用途を見いだし今まさに離陸しようとしている。