【直言】“こと”を起こして人をつくる モノづくりと共鳴するコトづくり

 業は,一人では実現できないような大きな夢や目標に,志を同じくする者が集まって挑戦するための組織である。当然,モノづくりは一人ではできない。組織やチームが一丸となって思う存分に動ける舞台が整ってこそ,うまくいく。この舞台造りを,私は「コトづくり」と呼んでいる。
 モノづくりの根幹は技術だが,技術は目に見えず,触れることもできない。技術自体が使い手にとって価値があるわけでもない。作り手は,多様な個性や才能が集って協力し,技術に「夢」や「志」「使命感」といった思いを込め,価値のある「物」として使い手に届けなければならない。このための仕組みとマネジメントがコトづくりなのである。(以下,「日経ものづくり」2008年2月号に掲載)

ときわ・ふみかつ
ときわ・ふみかつ
1957年に東京理科大学・理学部化学科を卒業,花王に入社。米Stanford University留学,理学博士取得(大阪大学),研究所長,取締役を経て,1990年に社長,1997年に会長。『モノづくりのこころ』『反経営学の経営』(共著)など著書多数。