【特集】世界戦略車の最適解

【特集】世界戦略車の最適解

【Part1】日本で売っても儲からない

需要構造の変化によって、自動車産業では海外市場優先が加速する。 グローバルに通用するクルマを設計する必要がある。 一方では、各地に合わせたローカルな対応も欠かせない。 クルマが抱えるさまざまな事情によって、対応には幅がある。 北米を市場として重視するか無視するかで、そのクルマの性格はある程度決まる。

 10月末に相次いだ自動車メーカーの決算発表。目立ったのは国内と海外の温度差だった。販売台数を地域ごとに見ると、北米でのマツダを除き、海外はどの地域も前年同期比でプラス、国内だけマイナス。各社とも全く同じ図式、日本の独り負けである。
 前年同期比という瞬間風速だけではない。日本自動車工業会が2006年までの数字をまとめたところ、国内の4輪車販売は9年間に15 %減った(図)。これに対して輸出は好調が続き、9年間に30 %の伸び、2006年には国内販売を上回った。海外生産は9年前から83%伸びた。

図●四輪車新車販売輸出台数台数は15%減、四輪車輸出台数は30%増(トラック・バス含む)
図●四輪車新車販売輸出台数台数は15%減、四輪車輸出台数は30%増(トラック・バス含む)
日本自動車工業会調べ。

【Part2】5車種に見る、それぞれの事情

 トヨタ「カローラ」は2006年10月に全面改良した日本向けの「カローラアクシオ」「同フィールダー」で10代目に突入した(図)。 2007年5月には中国向け、2008年には北米向けも全面改 良、近いうちに世界中のカローラが10代目で揃う。
 この10代目、開発の手順に大きな変更があった。9代目までは、まず、日本版カローラを開発し、それを世界に展開していった。どこでもやっていたことだ。

図●日本向けの「カローラアクシオ」
図●日本向けの「カローラアクシオ」

【Part2】5車種に見る、それぞれの事情

 2007年度上期、日産自動車自身の分析によれば、日本市場の販売に貢献した車種は「デュアリス」と「エクストレイル」だった。前者は1万5000台,後者は1万3000台を販売した。

図●日産「デュアリス」
図●日産「デュアリス」

【Part2】5車種に見る、それぞれの事情

 「どんな車種も、初めは世界戦略車を目指すんですよ」。ホンダ四輪事業本部開発企画室RAD主幹の阿野則生氏は「世界戦略車は作るものではなく育てるものだ」と説明する。
 その成功例が、阿野氏が携わった「CR-V」(図)だ。輸入を始めたばかりの韓国で2007年2月から6月まで5カ月連続で輸入車1位になったことをはじめ、全世界で好評だ。

図●現行「CR-V」
図●現行「CR-V」
世界戦略車に育った。

【Part2】5車種に見る、それぞれの事情

 三菱自動車は2007年上半期、188億円の営業利益を計上、5年振りに黒字に転換した。その原動力が「ランサー(日本名ギャランフォルティス)」だ(図)。2007年末までの見込みでは12万7000台 を販売するという好調さで、これが収益に貢献した。

図●「キャランフォルティス」の「EXEED」
図●「キャランフォルティス」の「EXEED」
世界中、この仕様で販売する。

【Part2】5車種に見る、それぞれの事情

 スズキは思い切った世界戦略車シフトを敷いたメーカーだ。「スイフト」「エスクード」「SX4」を立て続けに発売し、3車種すべてを自ら世界戦略車と呼ぶ。登録車のほとんどすべてが世界戦略車ということになる。

図●スズキ第3の世界戦略車「SX4」
図●スズキ第3の世界戦略車「SX4」