<プロローグ>
2011年,アナログ停波で
地上テレビ放送の王座が揺らぐ?

 「細かい問題はあるが,全体的には世界に誇れるスムーズさでデジタル移行が進んでいる」─。ある在京キー局の関係者は自信たっぷりにこう語る。2011年7月に地上アナログ・テレビ放送が終了(アナログ停波)し,地上デジタル放送(地デジ)に完全移行する。つまり「アナログ停波後は地デジが王座を継承する」。これが,テレビ局が描くシナリオだ。

第1部<総論>
ほころびを見せる移行のシナリオ
それでも停波は予定通り

 「2011年までに地上デジタル放送を完全に普及させる」。これは,同年にアナログ放送が終了する以上,動かせない目標だ。しかし,地デジへの移行の道のりには,これまで見えていなかったさまざまな問題が立ちはだかっている。放送エリアをいかに広げるかという送信側の問題だけではない。低価格製品の不在,アンテナの問題,共同視聴施設の問題,そして電波障害。受信側に残ったさまざまな問題がアナログ停波,第1の死角である。

第2部<将来>
多チャンネル時代が本格到来
インタフェースの変革が不可避

 テレビ受像機が登場して約50年がたつが,ケータイが10年で進化したほどには変わっていない。アナログ停波がもたらす混乱は,テレビ受像機にとって本格的な多チャンネル時代への扉でもある。しかし,安易な機能追加はテレビの存在理由を消しかねない。テレビのあり方そのものからの変革が求められている。