「名野さん,すぐに来てください! あのデータは本当だったんですね」
2001年10月26日。三洋電機の名野隆夫に,AV機器メーカーから連絡が入った。電話口の相手は,興奮を抑え切れないようだ。

「最初は信じていませんでした。しかし,試しに評価したら大変な数値が出て…。ウチのカメラ・モジュール開発部隊が大騒ぎしています。営業担当の方とすぐ飛んできてください」

 名野がチャージ・ポンプの試作品をAV機器メーカーに送り届けたのは,2001年9月11日。米国で同時多発テロが起こる直前だった。相手の反応は良かった。「チャージ・ポンプをずっとやってくれていたなんて,嬉しくてウルウルです。すぐに評価したい」。ところが,反応は全く返ってこなかった。評価さえしてみれば驚かないはずがないのに。