「この電流値を変えると,出力電圧はどう変わる?」

  回路図を指さしながら,若手技術者に熱っぽく語りかける。講義は真剣勝負。あくびも許さない。全身全霊を傾けて,生徒たちと対峙する─。

 1996年10月。三洋電機 半導体事業本部の名野隆夫は,20年近く勤めたCAD部門から,田端輝夫が率いるMOSLSI事業部 第1技術部に異動した。名野はここで,IC設計の業務の傍ら,部内の若手技術者へアナログ技術を教え始めた。「ウチの連中を鍛え直したい。名野さんの力を貸してくれ」という,田端のリクエストに応えたものだ。田端は若手のデバイス技術者があまりにも回路設計を知らなすぎると嘆いていた。名野も全く同感だった。