なぜウチの会社では,iPhoneが作れないのか…

第1部<提言>
「思わず好きにさせる」方法を
iPhoneとWiiに学ぶ

 実物に触れたり動かしたりすると,思わず欲しくなる…。理屈にならないユーザーの感情をとらえた民生エレクトロニクス機器がヒットを飛ばしている。機能の豊富さや性能の高さなど,数値化しやすい目標を立てて開発する従来型の開発手法では,こうした「思わず好きになる」機器は生み出せない。なぜ好きになるかといったユーザーの気持ちは数値化しにくいからだ。国内メーカーは従来の体制を見直し,試作やチューニングに時間や資金を投ずる必要がある。

第2部<事例>
尖った特徴はこうして生まれた
実製品に見る開発体制の在り方

 他社にはない尖った特徴を持つ製品は,国内メーカーからも着実に生み出されている。こうした製品の開発体制を調べると「思わず好きになる製品」を作るための四つの要素のうち,少なくとも一つを満たしていることが分かる。困難と思われてきたこうした開発体制が実現できた理由はさまざまで,方法論は一つとは限らない。四つの要素のそれぞれをどうやって満たしたか,具体的な製品開発の事例を通して説明する。

第3部<論文>
iPhoneが示唆する
機器開発のジレンマ

 iPhoneのユーザー・インタフェースを,デザインの専門会社に「作り手」の立場から評価してもらった。他の製品と比べて際立った特徴として,タッチ・パネルを用いた直接操作と動的なグラフィックス表示を,高い水準で融合させたことを挙げる。タッチ・パネルを使って自然な操作を実現するために,念入りなチューニングを施したことがうかがえる。このようなユーザー・インタフェースを実現することは,現在の日本メーカーの開発体制では困難とみる。企画やユーザビリティ・テストなどの段階で,採用されない可能性が高いからである。(本誌)