白物家電や産業機器,自動車などの電源回路やモータ駆動回路において,そろそろ「Si材料の限界」が見えてきたといわれるパワー半導体。次世代材料としてSiCやGaNが検討されているが,どちらが本命なのか絞り切れなかった。そんな状況の中,いずれの新材料も開発してきたロームが,今後のパワー半導体事業の方向性を明らかにした。「まず耐圧200V以下からGaNを,1kV以上にSiCを利用していきたい」(ローム 取締役 研究開発本部 本部長の高須秀視氏)とし,使い分けの方針を示した。さらに,その実現に向けたGaNデバイスの開発にも成功した。

 SiCやGaNを用いたパワー半導体は共に,理論的にはSi製のパワー半導体の限界を超える高い耐圧と小さいオン抵抗を達成できる。GaNを使った方がSiCよりも同じ耐圧でオン抵抗を約1/5にできるとされるが,現実にはGaNにポストSiを委ねるとは言い切れない。いずれの素子も電子移動度や絶縁破壊電界,熱伝導率といった物性値を,「極限まで引き出せていない」(ロームの高須氏)ためだ。