第1部<転換>
厳しさ増す熱との闘い
手法も主役も変わる

 民生機器が,かつてないほどの熱問題に悩まされている。小型・高機能化の飽くなき追求により,機器内部の発熱量が増す一方で 小さくなる表面積からの放熱量は減るばかり。その結果,放熱の限界が見え始めた。 電気,機構,意匠といった各設計者が一丸となって設計段階から熱への対処を考慮する「熱設計」に取り組むのは今だ。

第2部<攻め方>
熱の収支を見積もり
放熱経路を決める

 機器の筐体の中には,熱に対する特性がそれぞれ異なる部品や部位が同居する。発熱する部品や熱に弱い部品,放熱可能な部位や熱をためたい部位そして熱を持ってはいけない部位─。
これらを踏まえながら行う熱設計は大きく2 段階に分かれる。まずは機器全体の発熱量と放熱量を見積もり,製品の企画に破綻がないことを確認する。次にシミュレーションを使い,熱を逃がすための経路を具体的に決めていく。

第3部<新戦法>
もう後付けでは通用しない
あらゆる部品を放熱に総動員

 熱問題の対処に使える部品が変わりつつある。 従来,試作後の熱対策で頻繁に使われていたグラファイト・シートすら実装部品の高密度化によって,もはや後付する場所がない状況だ。 プリント基板をはじめ,プリント基板を筐体に固定するのための接着剤や両面テープさらには放熱部品の代表格であるヒートシンクにも,より高い放熱能力が求められている。部品の放熱性を設計初期から考慮し,使える部品はすべて放熱に生かす時代がやって来た。