K Y B

第2回 ダンパ

摩擦を制御して基本性能磨く
減衰力調整は無段階に

車両の操縦安定性と乗り心地に大きく影響するダンパ。 1980年代にはフルアクティブ式のサスペンションなど電子化へ向かった。 KYBに基本性能向上の取り組みと電子制御の動向を聞いた。


ダンパは、自動車が走ることで発 生する振動を減衰させる装置 だ。その役割は、大きく三つに分けら れる。一つは、路面からの入力によっ て生じた車体の振動を減衰させ、乗り 心地を向上させること。二つめは、同 じく路面からの入力によって生じた車 輪の振動を減衰させ、接地性を向上さ せること。そして三つめは、加減速や 操舵によって生じた慣性力による車体 の動きを抑制し操縦性を向上させるこ とだ。
 ダンパの原理は非常に単純で、シリ ンダ内に油を閉じ込め、バルブ付きの ピストンを移動させる。バルブを油が 通過する際の粘性抵抗を利用してエネ ルギを吸収する。ピストンの移動に伴 う油の体積変化を吸収するためにガス を封入しておく場合が多い。
 バルブは、複数の薄板を重ねたピス トンバルブとオリフィスの2種類で構 成し、ばねの強さや穴のサイズを調整 することで減衰力を変える。減衰力 は、ピストンが動く速度に応じて変化 するため、ダンパのチューニングでは この減衰力特性が重要になる。

段取り替えは1日150回
 製造では品種が多いのが悩みだ。 KYB の場合、1 日の段取り変えは、 140~160回にもおよぶ。シリンダ径を 45、50.8、54mmの3種類に標準化して いるが、車種ごとに取り付け形状が異 なるため、多品種にならざるを得ない。
 代表的な形式として、シリンダが二 つある複筒式と一つの単筒式がある。 複筒式は、内筒と外筒の二つを持ち、 両方に油を満たして、外筒にガスを封 入するためダンパを短く作りやすい。 一方、単筒式は一つのシリンダがフリ ーピストンによって油とガスに隔たれ ている。ピストンの径を大きくできる ので、油の圧縮圧力を下げられるた め、基本性能を高めやすい。

日経オートモーティブ 連載