日経オートモーティブ 解説

未来のクルマは草や海藻で走る?
 スイッチグラス。学名Panicum virgatum。 「ありふれた草木を愛でる」ことが得意な日本人でなければ、 魅力を感じることのなさそうなタダの雑草である。  これが、自動車産業のこれからを支える可能性があるというから、評価に困る。 原油がなくなる、あるいは高騰する将来に、このスイッチグラスを 栽培、加工することによって自動車を走らせ続けることができるかも知れない。 人だけでなく、草も見かけによらない。


 ハム、ソーセージ、砂糖、マヨネー ズ、オレンジジュース、トルティーヤ ―。今年に入って食品の価格が次々 と上がった。因果関係は明らかではな いが、「これからはバイオエタノール だ」という“アナウンス効果”が原因の 一つだったことは確かだ。 バイオ燃料は必要なのだが
 これからの自動車燃料として、植物 を原料とするバイオ燃料への期待が高 い。理由は、今使っている化石燃料が 有限であるため再生可能なエネルギに 転換したいこと、バイオ燃料が「カー ボンニュートラル」であるためCO2を 排出せず、地球温暖化の防止に役立つ と評価されること―の2点である。
 そこに立ちはだかるのが食糧との競 合だ。米国のトウモロコシ、ブラジル のサトウキビ―現在流通しているバ イオエタノールはいずれも“その気に なれば食べられる”植物を原料にして いる。同じ資源を奪い合えば、価格が 上がるのは当然だ。市場原理を離れて も「多くの貧しい人が飢えているのに、 自動車に乗るような限られた人が“食 糧を燃やす”のはいかがなものか」と、 ヒューマニズムの立場からも攻撃され やすい。

日経オートモーティブ 解説
図●食べられない部分から燃料を作る
セルロースをエタノールに変換する技術がカギを握る