1995年末,JR東日本の会議室は重苦しい空気に包まれていた。

 同社は1995年4月から10月まで,自動改札機の第二次フィールド試験を実施した。非接触ICカード導入の可否を決める重要なテストである。結果は芳しくなかった。ゲートが誤って閉じる「通過阻害率」は数%。磁気カード式改札機の4倍と高い。試験の責任者であるJR東日本の椎橋章夫と三木彬生にとって,この値は「失敗」を意味した。首都圏では, 1分当たり60人以上もの乗客が改札機を通る。この値では大渋滞が起きかねない。