日経ものづくり ドキュメント

レクサスLSの開発
第9回 雪上の疾走

 2006年9月19日。「レクサス LS460」 の新車発表会が終了し,吉田守孝に とっての特別な一日が終わろうとして いた。雨粒が滴り落ちる窓ガラスの外 には,既に漆黒の闇が広がっている。 そこに映った自分の顔を見つめている と,頭の中ではさまざまな出来事が浮 かんでは消えていく。

 レクサスブランド のフラッグシップとして最先端技術を 惜しみなく投入したこと,それを高いレ ベルの品質で実現するために幾多の 試練を越えてきたこと…。しかし,これ ですべてが終わったわけではない。8カ 月後には, 「もう一つのLS」を世に送り 出さねばならないのだから。それは,吉 田にとってLS開発の総仕上げだった。

 実は,4代目となった今回のLSでは 初めて「1エンジン,1ボディ」という伝 統の殻を破った。これに対し周囲から は当然反対の声が上がる。吉田は,ブ ランド価値の向上と収益の確保を両立 するためにはバリエーション展開が不 可欠と説いて回った。それが,もう一つ のLS,高性能パワートレーンを搭載し た「LS600h」と,そのロングホイールベー ス版「LS600hL」にほかならない。(以下,「日経ものづくり」2007年7月号に掲載

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