太陽電池は,地球温暖化への懸念の高まりや欧州の推進政策を追い風に従来のニッチ技術からエネルギー産業の柱の一つへと変貌しつつある。それに伴い,新規参入するメーカーが世界中で急増している。多くが「太陽電池の素人」である彼らが市場に参入できるのは装置メーカー各社が太陽電池の製造ラインを一括提供するサービスを始めたからだ。資金と土地さえあれば誰でも太陽電池を生産できるようになる時代の幕開けにシャープなど既存の太陽電池メーカーの優位は大きく揺らぎ始めている。新型品種の本格的な量産も始まり,メーカーの勢力図が一変する可能性が出てきた。

 「このままでは太陽電池市場が,液晶パネル市場の後を追うことになるかもしれない」(シャープ ソーラーシステム事業本部 副本部長 兼 次世代要素技術開発センター 所長の佐賀達男氏)─。シャープは現時点で太陽電池のセルやモジュールで世界一の生産規模を誇る。しかし,つい2~3年前まで同社が圧倒的優位にあった液晶パネルの市場シェアが,今は韓国や台湾メーカーの勢いに押されつつある状況が太陽電池でも再現されるのではないかと警戒感をにじませる。