日経ものづくり ドキュメント

レクサスLSの開発 第7回
執念

 危険を検知したらクルマが危険回避に積極的に介在する―。21世紀のクルマと安全性の在り方をこう描くトヨタ自動車の吉田守孝は,自らがチーフエンジニア(CE)を務める次期レクサスLSこそ,道を付けるのにふさわしいと考えていた。

 その安全システムのベースになるのが,1990年代後半から本格的に開発が始まった「プリクラッシュ・セーフティ・システム」と呼ばれる技術だ。このシステムは,2003年8月にマイナーチェンジする予定のセルシオ(現行のLS)へ搭載することを目標に開発が進められており,その半年前に発売される「ハリアー」にもその一部機能を載せることが決まっていた。次期LSでは,この技術をいかに進化させるかが鍵だと考えた吉田は,先行開発部隊を訪ねていた。
「プリクラッシュの開発は順調に進んでいるかな?」
「ええ,おかげさまで」
「そのシステムの概要をあらためて説明してほしいんだが・・・」
「はい。まず障害物は,車体の前方に設置したミリ波レーダによって検知します。この情報を基に,衝突の危険が高いと判断した場合,ドライバーのブレーキ操作に応じて制動力をアシストします。それでも衝突を避けられないと判断したら,シートベルトを巻き取って被害を軽減するんです」

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