日経ものづくり 工場安全
第2回:本質的な安全設計の勘所

前田育男,関野芳雄,岡田和也
IDEC 規格安全ソリューションセンター

リスクは設計段階で減らす

 日本の企業には,国内の法規や規格に従っていれば安全対策は十分という風潮があるのではないだろうか。法規や規格を守るのは当然である。だが,製造物責任(PL)や事業者の安全配慮義務といった観点で日本の法規や規格の成り立ちを子細に検証してみると,これらを守るだけでは「安全なものを安全に造る」のに万全とはいえない。

国際規格の考え方を先取りする

 近年,国内安全規格や安全対策基準に国際標準の考え方を反映させようという動きがある。既存の法規や規格が決して十分でないことを裏付けるものだ。2001年に公表された「機械の包括的な安全基準に関する指針」(厚生労働省通達)や2006年4月に改正された労働安全衛生法,最新のJIS規格の内容を見ても,こうした動きは明らかといえる。

 規格に関しては,WTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)の影響が大きい。同協定は,各国の「規格」および「規格の適合性評価手続き」が国際貿易を妨げないように,国際規格との整合性がある国内規格の策定をWTO(世界貿易機関)加盟国に求めている(図)。日本のJISも対象だ。従って,ここ数年の間に発行されたJIS規格は,それに対応するIECやISO規格と原則同じ内容である。

日経ものづくり 幾何公差
図●WTO/TBT協定による影響
WTO/TBT協定は,WTO(世界貿易機関)で定められた貿易における技術的障害に関する協定。WTO加盟国の国家規格は,IECやISOといった国際規格に原則として整合させる必要がある。